離婚を決意された方へ
Contents
夫婦が離婚を決意する瞬間
以下では、どちらが先に離婚を決意したかを問題にし、相手が離婚を決意したから自分も、というのは、考慮に入れないこととします。
妻が(先に)離婚を決意するケース
①相手(夫)のモラハラがあるケース、強いとまで言えなくても(自分(妻)が不倫するケースも含む)
②相手(夫)が不倫したケース
夫が(先に)離婚を決意するケース
①相手(妻)のモラハラが強いケース
②自分(夫)が不倫したケース
※相手(妻)が不倫したケースは、妻の方に既に離婚意思があるケースが多く、そのケースは、夫が先に離婚を決意するケースとは言えない
説明
上記のケースは、これまで相談・依頼を受けたケースの中から、典型的なものを抽出したものです。
ですから、当然、上記に含まれないケースもあります。
以下で説明するのは、あくまで典型的なケースに関するものです。
妻も夫も、多かれ少なかれ相手のモラハラ的行動が離婚したい理由の一つになっている場合がほとんどと感じます。
そしてもちろん、自らの異性関係、要するに好きな人ができた、ということも離婚したい理由になることがありますし、相手が不倫したから嫌いになった、というケースもあります。
基本的に、モラハラまたは不倫が関係していて、どちらもまったくないというケースは、少なくとも法律事務所に相談に来るようなケースの中では、まれです。
このように、妻も夫も、モラハラか不倫が関係している点では同じですが、妻と夫とでは、離婚を決意する場面に違いがあるように思います。
まず、相手のモラハラに関してですが、妻は、モラハラ的行動が、「耐え難いほどに強い」とまで言えなくても、離婚したくなるケースが多いように感じます。
夫は、妻のモラハラ的行動が軽ければ、離婚までしないケースが多いように感じます。
これは、夫の方は、平日の日中は仕事をしていることが多く、人生のうえで、仕事が占めている割合が多く、家庭以外にも自分の居場所があるからと推測されます。
これに対し、妻は、特に子どもがいるうちは、家庭中心の生活ですから、家にいる時の夫の言動を嫌と感じた場合に、気持ちに与える影響が大きいと推測されます。
次に、自分の不倫に関してですが、妻の方は、自らの不倫が離婚の理由となることはもちろんありますが、その場合、夫にモラハラ傾向があり、不倫がなくてもモラハラを理由に離婚したいと考えていたというケースが多いように思います。
夫に何の不満もないのに、不倫に走り、かつ、自ら離婚を求めない妻というのは、これまで相談に来た中では、ほとんど記憶にありません。
夫の方は、妻にそれほどモラハラ的行動がなく、それほど不満がなくても、好きな人ができ、その結果、離婚したくなるというケースがあるようです。
また、相手の不倫に関してですが、妻の方の離婚を決意するケースにだけ挙げてあります。
これは、夫は、妻にそれほど不満がなく、離婚したいと全然思っていなくても不倫するケースがあり、妻は、夫が不倫すると、かなり苦しみ、夫のことが嫌になるのに加え、夫が不倫していることの苦しみから逃れるために離婚を選択する、というイメージです。
ただし実際には、夫から離婚を求められているわけではないが、夫の不倫だけを理由に自分の方から離婚を進めるというケースは少ないです。自分の方から離婚を進めるケースは、夫にモラハラもあるケースが多いです。それは結局、モラハラ夫が不倫したケースとなります。
不倫した夫に、モラハラがなく、離婚を求めてきていないというケースでは、自分(妻)の方から離婚を進める必要性が高くないことが多いです。弁護士をつけると自分の方から離婚を進めることになるので、自分の方から離婚を進めるべきかを慎重に判断したうえで、離婚を決意すべきです。夫が不倫しているが、離婚を進めないということになると、妻は苦しみますが、離婚の問題とは別の夫婦間の問題ということになります。
これに対し、夫の方の離婚を決意するケースには、相手の不倫を挙げていません。
これは、妻が不倫するケースというのは、夫にモラハラ傾向があり、不倫する時点で妻は既に離婚意思を生じているケースが多く、この場合、夫が先に離婚を決意したと言えないからです。
夫に何の問題もないのに、妻が不倫し、かつ、妻から離婚を求めていないが、夫が離婚意思を生じたというケースは、これまで相談に来た中では、ほとんど記憶にありません(もしかしたら、世の中で起きている離婚にはそういうケースがあるのかもしれませんが、少なくとも弁護士に相談するようなケースの中にはあまり見られないようです)。
夫がモラハラで、妻が不倫するというケースについて、さらに詳しく説明します。
モラハラタイプの夫は、妻が不倫しても、妻が離婚したいと言い出さない限り(場合によっては、妻が離婚したいと言っても)、離婚しようとはしない場合が多いように感じます。
モラハラタイプの夫は、妻に対する支配欲が強く、妻が不倫した場合、夫にとっては、かえって、支配を強めるチャンスと言えます。
また、妻に対して関心を持っているように見えても、それが優位に立ちたい気持ちや支配欲の表れであり、本当の愛情でないとすれば、不倫してもそれが理由で離婚したいとはならないのかもしれません。
この場合、妻の方が先に離婚したいと言い出し、その結果、夫も離婚に応じる、という場合が多いです(この場合、離婚に進む過程で、夫は支配欲をむき出しにし、極めて高圧的に出てきます)。
その支配がさらにエスカレートすると、「離婚しない」となるのかもしれません。
妻が不倫し、自分に対して嫌悪感を丸出しにしているのに、かたくなに離婚に応じない夫の心理は、なかなか想像し難いですが、この支配欲という観点から説明ができるように思われます。
夫がモラハラ夫の場合、自ら不倫しておきながら離婚に応じない、という人がいます。
妻を裏切っておきながら、妻に対する支配は維持したい、という感じです。
もともとモラハラ夫のことを嫌だと思っていた妻にとっては、不倫の証拠があれば、不倫を理由に離婚できる、ということになります。
モラハラは、相手が離婚に応じないことが最大の問題なので、不倫を理由に離婚できれば、この最大の問題がクリアできてラッキーということになるはずです。
しかし、実際は、夫が不倫したのに、「離婚できてラッキー」となる妻は少ないようです。
嫌いははずの夫が不倫したとしても、やはり、苦しむ妻が多いように感じます。
夫の方も、自ら不倫しておきながら、高圧的な態度に出ることがあり、通常の(不倫がない)モラハラ事案と同じような進めにくさがありますが、「不倫の証拠がある」=「いざとなったら訴訟で離婚できる」という伝家の宝刀がある分、有利と言えます。
離婚を決意したら考えておくべきこと
①離婚後の生活のこと
離婚を決意したら、当然、離婚後の生活のことを考えなければなりません。
それは主に、収入と住む場所の2点です。
収入がない人は、就職して収入を得ることを、収入があってもパートなど少ない人は、収入を増やすことを考えるべきです。
これは、別居する前に準備しておいた方がよいです。
モラハラ夫の中には、妻が収入を得ることを嫌がる人がおり、その妻は、同居中にこれらのことをするのを躊躇するケースがあります。
しかし、これから離婚しようとしている夫より、離婚後の生活の方が大事ですから、夫から嫌がられようと、これらの準備を別居前から進めるべきです。
住む場所については、当然、別居前に探す必要があります。
住む場所を探すことが、別居を現実のものとして意識する第一歩だと思います。
この時も、モラハラ夫のことを考えて住む場所を決めようとする人がいます。
しかし、離婚後に住む場所は、「自分が住みたい場所」にすべきだと考えています。
夫の影響から解放されて新しい人生を始める場所ですから、自分が前向きになれるような、好きな場所を選ぶべきです。
相手から受け取れる養育費の大体の額は予想できますから、それと自分の収入を合わせ、家賃などの支出と照らし合わせ、離婚後の生活をシミュレーションするとよいです。
漠然とした不安を抱いているだけでは先に進めませんから、具体的に別居後の生活をシミュレーションしてみて、夫と離れた新しい人生を現実的なものとしてイメージしてみることが、前に踏み出すのに必要なことだと思います。
②子どものこと
離婚時には、子どもに関しては、親権と養育費と面会交流について決める必要があります。
このうち、親権については、別居前に十分に検討しておく必要があります。
養育費をどのくらいもらえるかについても、別居後の生活をシミュレーションするため、別居前に予想しておいた方がよいです。
面会交流については、相手がどういう希望を持つかにもよりますので、別居前に考えておく必要性は低いです。
③離婚時に請求するお金のこと
離婚時に請求するお金は、主に、財産分与と慰謝料の2つです。
慰謝料は、実務では、不貞といった明確な理由がない場合には、あまり問題になることはありません。
したがって、主に財産分与が問題になると思っているのがよいです。
婚姻後に増えた財産を2分の1で分けると思っていればよいです。
所有不動産がなく、婚姻後に貯まった財産が預金だけで、双方がその金額を把握している、といったケースであれば、それを半分ずつ分けるだけなので、簡単です。
しかし、実際には、そういった簡単なケースはほとんどなく、住宅ローン付きの所有不動産があったり、夫婦の一方の親がお金を出したりするなどし、「別居時の財産のどの部分をどのような割合で分けるべきなのか」について、複雑な争いとなるケースが多いです。
別居前には、相手の財産にどのようなものがあるのかを調査しておくことが、最低限必要なことです。
どのような資料が必要かは、専門的な判断が必要で、せっかく資料を入手したのに役に立たなかったら、別居後には入手できなくなることがありますので、別居前に弁護士に相談することをおすすめします。

松平幹生

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