財産分与に関するよくあるご相談
目次
1 財産分与でよく問題になる争点
離婚における財産分与では、どういった点がよく争点になるか、説明します。
よく争点になるのは、特有財産の点、財産開示の点、不動産の評価額の3点です。
この他、特にモラハラ離婚で問題になりがちな特殊なのものとして、別居前に費消した財産の使途の問題があります。
もちろん、他にも細かい争点は無数にありますが、これらの点は、問題になる頻度が他の争点に比べて多いことから、以下、一つひとつについて説明します。
2 特有財産
まず、もっともよく争われ、大きな争いとなりやすいのが、特有財産の問題です。
特有財産とは、どちらかの婚姻前の財産や、婚姻中に贈与や相続によって得た財産のことで、財産分与の対象になりません。
財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産ですが(実務では、実質的共有財産、または単に共有財産と呼ばれます)、特有財産は、夫婦で協力して形成したとは認められないことから、財産分与の対象とならないのです。
特有財産の問題でよく争いになるのは、どちらかの親が自宅の頭金を支出したケースです。
いくら支出したということが明確で、争いがなければよいのですが、そうはならず、立証を求められるケースが多いです。
特有財産性の証明には、専門的な知識が必要になるので、これが問題になるケースでは、弁護士の必要性が高いと言えます。
さらに、証明できたとしても、これをどう自宅不動産の財産分与額に反映させるかについての計算が必要となります。
この計算方法はいくつかあり、どの計算方法を使うかや実際の計算について、高度な専門的知識が必要ですので、弁護士でなければ難しいと思います。
自宅不動産の他に、婚姻時の預貯金等の財産を特有財産とするということも、よく問題となります。
これについても、単純に婚姻時の金額を差し引けばよいだけではないケースが多く、専門的な知識が必要となります。
3 財産開示
財産分与の話を進める場合、まず、双方が財産の資料を開示する必要があります。
ここでは、「相手がすべての財産を開示したか」つまり「相手が財産を隠してないか」が問題となります。
相手が財産を隠していないかを判断するためには、別居前にある程度相手の財産を把握しておくことなどが必要になります。
どのような財産があるかさえ把握していれば、裁判所の調査嘱託という方法を使うこともできますから、相手に財産を開示させることは可能です。
相手が財産を隠す可能性がある場合は、弁護士の力が必要となることがあると思います。
4 不動産の評価額
財産が預貯金等、金額がはっきり決まっているものだけであれば、資料が開示されさえすれば、金額が争いになることはないのですが、金額がはっきり決まってないものとして、不動産があります。
金額がはっきり決まってないものとしては、不動産以外にも、自動車や、個人事業が法人化されている場合の会社の評価額、医療法人の評価額といったものもあります。
こういった財産の評価額をどう決めていくかも、専門的な知識が必要となります。
5 別居前に費消した財産の使途
私の感覚では、特にモラハラ夫が問題にすることが多い争点だと感じているのですが、妻が夫婦の財産を主に管理していた場合に、夫が、「もっとお金は残っているはずだ」と言ってくることがあります。
そして、その主張の中で、「何に使ったのか説明しろ」と言ってきます。
私は、この問題は、基本的には、2の財産開示の問題に還元されると考えています。
別居時にどんな財産が存在するかだけが問題となるはずです。
私の経験上、使途を問題にして、何らかの具体的な法的な効果が発生したことはありませんから、不毛な争いだと思うのですが、モラハラ夫の代理人についた弁護士も、これを一生懸命主張してくるので、辟易としてしまうことがあります。
「何に使ったのか説明しろ」ということを追及したいという心理は、モラハラ夫に特に強いように思います。
この主張にいかに対処していくかについても、当事務所は豊富な経験を有していますので、ご相談いただければと存じます。
弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)
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