離婚には合意しているが条件が決まらない方へ

離婚協議が進まないという人が多い

 別れようとしている夫婦ですから、離婚に向けた話をしても、互いに感情的になり、スムーズに話が進まないということが多いと思います。その点で第三者である弁護士を入れることに意味があるのですが、弁護士を入れないと離婚協議が進まないのは、感情だけが原因ではありません。

 離婚協議が進まない原因は、二つあると思われます。一つは、条件として何を決めなければならないのかがはっきりわからないという点、もう一つは、条件に争いがある場合にどのように交渉を進めてよいかわからないという点です。

離婚時に決めておく条件は最大で6つだけ(婚姻費用も問題になる)

離婚時に決めておく条件は、最大で6つだけです。それは、子どもの親権者、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割です。もちろん、子どもがいなければ、前三者について決める必要はありません。また、慰謝料が問題とならないケースでは、慰謝料を決める必要はありません。
 離婚時の条件ではありませんが、通常は、別居から離婚までの婚姻費用も問題となります。

・親権者

 未成年の子がいる場合は、親権者を決めなければ、離婚することができません。親権者は、通常は子どもと一緒に暮らして世話や教育を行い、子どもの財産管理をします。
日本では、夫の方が妻より収入が多く、夫は主に生活費を稼ぎ、妻は主に子どもの世話や家事を行う、という役割分担の家庭が多いです。そのような家庭では、妻が親権者となるケースが割合としては圧倒的に多いです(例外もあります)。もともと主に世話をしてきた人が離婚後も世話を継続した方がよいだろうという、ある意味当り前のことですので、親権者が本格的な争いになることはそれほど多くはありません。例外的に親権者が争いになる場合は、非常に鋭い対立となることが多いです。
 

・養育費

 養育費は、財産分与に並んで、争点となりやすい点です。算定表に双方の収入をあてはめれば標準的な金額がわかるようになっていますが、子どもが私立中高に通っている場合に加算するか、妻が離婚時に無職の場合に収入をどうみるか、収入が算定表の上限を超える場合はどうするか、双方が子どもを監護する場合にどうするかなど、算定表からはわからない争点も多数あります。また、いつまで支払うかも決めなければなりませんが、20歳までとするか、大学に進学した場合は卒業までとするかといった点もよく問題となります。
 協議で離婚する場合は、養育費を定める時は、公正証書にした方がよいです。公正証書にしておけば、相手が支払いを怠った時に公正証書に基づいて給与等の差押えができます。

 

・面会交流

 面会交流は、子どもが小さい場合に特に問題となりやすいです。月に何回という頻度、時間、場所等について、争いになることがあります。争いが激しい場合は、離婚と別に調停になることもあります。どの程度まで細かく決めておくかは、ケースバイケースで、頻度だけを決めておくケースもあれば、細かいことまでルールを決めておくケースもあります。

 

・財産分与

 財産が少ない場合はあまり問題になりませんが、ある程度の財産がある場合は、財産分与金額を決めなければなりません。婚姻中に夫婦で築いた財産を半分に分けるのが基本ですが、その前提として、別居時に存在した双方の財産がいくらあったのかを確認するため、互いに資料を開示し合う必要があります。資料が出揃ったら、双方の財産を一覧表にして、財産分与金額を計算します。これだけでも一定の手間がかかりますが、自宅不動産の頭金をどちらかの親が支出してる場合にどう分けるかなどといった点が大きな争点となることがあり、単に財産を開示して半分にするだけでは済まないことが多いです。
 財産分与金額が決まったら、通常は、支払期限を定めて公正証書にします。

 

・慰謝料

 慰謝料が問題になるケースとしては、不貞を原因とするケースが圧倒的に多いです。相手が不貞を認めてない場合は、証拠が必要になり、代表的なものは、興信所による写真等の調査報告書です。興信所の調査には高額な費用がかかることが多く、十分な証拠を確保するのが難しいこともあります。相手が不貞をあくまでも認めない場合は、訴訟で決着をつけなければならないケースもあります。相手が不貞の事実を認めている場合や証拠がある場合は、金額の交渉となります。
不貞以外では、暴力や暴言も、慰謝料を請求する原因となります。暴力を受けた後に写真をとっておくとか、暴言の記録をとっておくことで、証拠とすることができます。

 

・年金分割

 年金分割は、婚姻中の厚生年金の標準報酬を分けるものです。これについては、大きな争いとなることはあまりありません。

●相手と離婚条件で合意できないときの対処方法

 専門家を入れず夫婦同士で話合いをする場合、問題点の整理ができないまま、互いに言いたいことを言い、そのうえ、感情的になることから、なかなか話合いが進まないことが多いようです。
 離婚協議をスムーズに進めるためには、まず、どちらかが、「私はこの条件であれば合意できる」という条件を提示することからスタートする必要があります。「相手が応じれば即終了となる条件」です。専門家からすれば、まずはこれを提示しなければ始まらないと思うのですが、夫婦同士の協議の話を聞いていると、それをせずに、五月雨式に言いたいことを言い合って、話があちこちに飛んで、収拾がつかなくなるケースが多いようです。

話合いの具体的な進め方ですが、「私はこの条件であれば合意できる」という条件を書面等(メール等でも可)文章の形で相手に提示することです。そして、それに対して、その場で「ああだこうだ」言ってもらうのではなく、後日、できれば同じように文章で回答してもらうのがよいです。同意できる点は同意すると回答してもらい、同意できない点に関しては、相手から「自分はこの条件であれば合意できる」という対案を提示してもらうことです。これを互いに繰り返せば、次第に合意に近づくことになりますが、現実はそううまくはいかない場合が多いようです。

離婚しようとしている相手と、互いに不信感を持ちながら協議をするので、冷静になるのが難しく、精神的なストレスがかかることが多いようです。

ですから、弁護士に依頼することを検討すべきです。

●離婚問題を弁護士に依頼するメリット

 離婚問題を弁護士に依頼するメリットは、次の点です。

・対等な立場での交渉・ストレスの回避~特に相手が怖くて言いたいことが言えない関係性がある場合

 ただでさえ、離婚したい相手と話し合うことには多大なストレスが伴います。まして、夫のモラハラを理由に離婚したいという場合に、夫と対等に話をすることは、不可能に近いように思われます。無理して話合いをすれば、多大な精神的ストレスがかかり、さらなるモラハラを受けることにもなりかねません。弁護士に依頼すれば、そういったストレスを回避でき、相手と対等な立場で交渉をすることができます。

・知識不足で不利な合意をしてしまうことを防げる

 例えば、財産分与では、双方の財産が預金だけで、別居時の金額も明らかな場合は、それを半分に分けるだけですから、高度な知識は必要ありません。しかし、多くの離婚は、そのように簡単ではありません。特有財産が問題になることも多いですし、それ以前に、相手が財産資料をきちんと開示しないことも多いです。また、例えば、養育費の私学加算の計算は、専門家でなければ難しいです。弁護士をつけないと、こういった高度な知識が必要となる点について、相手に言いくるめられてしまうこともあり得ますし、そもそも相手の主張が法的に正しいのかわからないといった事態もあり得ます。弁護士に依頼することで、そのような不利益を回避できます。

・正確かつ有効な協議書を作成することができる

 離婚条件を定める協議書は、専門的な言い回しで記載することが多いです。養育費や財産分与の支払いを確保するためには、後の強制執行を可能とするために正確な文言で作成し、それを公正証書にする必要があります。これを自分でやろうとすると大変な労力がかかると思いますが、弁護士に依頼することで、そういった労力を回避できます。

●最後に

 以上のとおり、離婚を自分で進めるためには、大変なストレス、労力、時間がかかります。そのうえ、正確な知識がないと不利益を受けるおそれがあります。弁護士に依頼すれば、弁護士に任せることができ、自分は自分の生活に集中することができます。離婚のことでお悩みの方は、是非当事務所にご相談ください。

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弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)

当事務所は、離婚に特化し、離婚問題全般に力を入れていますが、中でも、モラルハラスメントの問題の解決に積極的に取り組んでいます。 離婚で相談にお越しになる方の中には、モラルハラスメントで苦しんでいる方が多くいらっしゃいますが、そのような方が、その苦しみから解放されて自由になるため、力になりたいと思っています。 当サイトにはじめてアクセスされた方はまずはこちらをお読みください。 弁護士紹介/ パートナーと離婚したい方へ/ パートナーに離婚したいと言われた方へ
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