裁判官に任せておけば公平な解決になるのか
裁判官に任せておけば公平な解決になるか
訴訟を弁護士をつけずに自分でやろうという人は少ないですが、婚姻費用の審判は、調停が不成立の場合に自動的に審判に移行するので、自分でやろうと考える人もいるかもしれません。
審判では、調停委員ではなく、判断権を持った裁判官自身が進めるので、弁護士をつけなくても、裁判官に任せておけば、公平な解決になるでしょうか。
必ずしも、そうなるとは言えません。
審判では、自らに有利なことは、自ら主張・立証しなければなりません。
審判は、職権探知主義という建前がとられており、判断に必要なことは裁判官自ら探知することになっているのですが、当事者の一方が、自らに有利な主張・立証をしない場合に、裁判官が、その人を助けようと考えて、積極的に働きかけて主張・立証を促すことは、実際には少ないと思います。
もちろん、職権探知主義ですから、それがなければ最終的な結論が下せないことについては、主張・立証を促しますが、その事案の特殊事情のようなことまで、積極的に探ろうとはしてきません。
裁判官には、自己責任の考えが強く、弁護士をつけないで、自らに有利な主張・立証が不十分になってしまう人は、不利益を受けてもやむを得ないという考えが根強くあるように思います。
あまり一方に助け舟を出しすぎると、他方当事者が裁判官に不満を抱くかもしれず、裁判官は、そういうことにも敏感です。
また、自分に有利なことを主張・立証する場合にも、弁護士をつけないと、限界があります。
裁判官と弁護士は、同じ司法試験に受かり、同じ研修所で研修を受け、専門的な法律に関する共通認識のようなものが土台にあります。
そのため、弁護士が主張を整理すれば、裁判官にとって、何を言っているかわからないということがなく、整理されていてわかりやすい、ということになります。
裁判官は、常時100件以上案件を抱えているという話ですから、わかりにくい主張を時間をかけて解読するということをしようとはしません。
一般の人は、いくら勉強しても、専門的な法律に関して、整理してわかりやすく主張するには限界があり、裁判官からすると、読みにくかったり、無駄が多かったりします。
私も、当事者が作成した書面を読んだことが何度もありますが、争点から外れた出来事を延々と書いていたり、主張の意味がわからなかったり、明らかに認められない主張をしているといったことが多々あります。
こういった事情から、裁判官は、弁護士をつけていない当事者に対し、「弁護士をつけて欲しい」と常に思っています。
これは、実際に裁判官と接していればわかります。
弁護士をつけない人に対して、積極的に助けなければ、という感覚は、あまりありません。 前述のとおり、他方当事者との公平という観点も重視しています。
裁判官にそういう気持ちを持っていて欲しいと一般の人は思うかもしれませんが、実際にはそういうことはなく、かなりドライな感覚を持っています。
以上から、審判でも、弁護士をつけるのとつけないのとでは、結果が大きく変わってくる可能性がありますので、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)
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