離婚と年金

離婚と年金の問題

IMG_8822.JPG    公的年金には、国民年金と、厚生年金があります。
問題は厚生年金です。厚生年金を受け取ることができるのは、被保険者のみです。夫が働いて、妻は家事に専念するといった場合、妻が受け取ることができる厚生年金はごくわずかであるというケースが多く見られます。
 

年金制度の変更

離婚における年金問題については平成19年4月と平成20年4月に制度が変更されています。
 
平成19年4月より前は、妻が夫に厚生年金を考慮した請求を行い、夫が受け取る年金から妻に支払うという形しかとれませんでした。平成19年4月の制度変更により、夫婦の話し合いや家庭裁判所が決めた割合で、妻も自分の年金として直接支払いを受けられるようになったのです。
 
この制度は、平成20年4月からの制度と区別するために、「合意分割制度」と呼ばれています。分割割合は、最大2分の1までです。話し合いで合意が得られない場合には、家庭裁判所で分割割合を決めることができます。

平成20年4月の制度変更では、妻が専業主婦だった期間は、夫の厚生年金の保険納付実績を自動的に2分の1に分割できるようになりました。
 
前述の「合意分割制度」と区別するために、「3号分割制度」と呼ばれています。当事者間で分割割合の合意をする必要がない(家庭裁判所で分割割合を決めてもらう必要もありません)ので、年金分割の処理が簡便です。
 
ただし、この制度の対象となるのは、平成20年4月以降の専業主婦期間のみになります。たとえば、結婚期間が20年で平成25年の3月に離婚したとします。この場合、平成20年4月~平成25年3月までの5年間分のみが、「3号分割制度」の対象となります。
 
それまでの15年間については、「合意分割制度」に基づいて処理します。夫婦間で話し合い、もし合意が得られなければ家庭裁判所に分割割合の決定を求めます。
 
年金の問題はそれぞれの生活設計に大きな影響を与える問題なので、正しい理解が必要です。

年金分割について

離婚条件の一つとして、年金分割があります。
年金分割には、以下の2つの制度があります。

①合意分割制度

離婚等をし、当事者の一方または双方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度です。

なお、合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
したがって、3号分割の対象となる期間は、3号分割による標準報酬の分割に加え、合意分割による標準報酬の分割も行われます。


②3号分割制度

離婚等をし、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度です。

なお、「3号分割制度」については、当事者の合意は必要ありません。ただし、分割される方が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、「3号分割」請求は認められません。


多くの夫婦では、夫のほうが収入が多く、婚姻期間中の標準報酬月額等も夫のほうが多い場合が、多いです。そのため、妻が離婚条件として年金分割を求めることが多いです。
年金分割の按分割合については、2分の1で合意する場合がほとんどです(当事務所で取り扱った案件では100%)。たまに年金分割に応じないという主張をする夫がいますが、当事務所では、妻が希望する限り、年金分割の点において譲歩することはなく、最終的にはすべて2分の1で合意しています。

年金分割の合意は、協議離婚の場合は、公正証書にする必要があります。調停離婚の場合は、調停調書で定めれば、有効です。合意がまとまらない場合は、裁判所が定めます。

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弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)

当事務所は、離婚に特化し、離婚問題全般に力を入れていますが、中でも、モラルハラスメントの問題の解決に積極的に取り組んでいます。 離婚で相談にお越しになる方の中には、モラルハラスメントで苦しんでいる方が多くいらっしゃいますが、そのような方が、その苦しみから解放されて自由になるため、力になりたいと思っています。 当サイトにはじめてアクセスされた方はまずはこちらをお読みください。 弁護士紹介/ パートナーと離婚したい方へ/ パートナーに離婚したいと言われた方へ
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