なぜモラハラは他人から理解されにくいか~自分すら気付かない
モラルハラスメント(モラハラ)で苦しんでいる人は、まず、親に相談する人が多いのですが、親は、最初はよく理解してくれません。
親以外の他人に相談しても同様です。
目次
モラハラ被害者は、モラハラを受けている自覚がない
自分がモラハラで苦しんでいることに、自分自身でも気付かないケースもあります。
ここで、「気付かない」というのは、「通常の夫婦と異なる問題がある」ということに気付かないということです。
モラハラ被害は、普通の夫婦間のいがみ合いや喧嘩との区別がわかりにくいという特徴があるのです。
この特徴のため、モラハラ被害を他人に話しても理解や共感を得にくく、これが、被害者の苦しみを増しています。
モラハラの程度の問題
では、なぜ、すごく苦しいのに、自分で問題を意識できなかったり、他人から理解されなかったりするのでしょうか。
それは、モラハラの問題が、「加害の『程度の問題』だから」と、私は考えています。
程度の問題という言葉を使うと、軽いことのように思えますが、モラハラは、まさに、「程度」が問題なのだと、私は思います。
つまり、モラハラ加害者の加害の程度が、激しすぎる、強すぎることに本質的な問題があるのです。
※ここで、加害の「程度」が問題と書きましたが、その原因となるモラハラ夫の性格や夫婦の関係には、他の夫婦とは「質的な」違いがあります。
加害の程度が激しいということの意味は、妻がしたことに対して、モラハラ夫のキレ方の程度が大き過ぎて、両者が均衡していないということです。
これは、言い換えると、「そこまでキレられるほど客観的には妻は悪いことはしていない」と言えます。
妻がしたこと以上に夫がキレるということは、その、程度を逸脱した部分については、「妻には原因がない」ということです。
ではどこに原因があるかというと、モラハラ夫の中にしかあり得ません。
つまり、妻とは関係ない、モラハラ夫の心理的なナニカが原因ということです。
イメージで言うと、モラハラ夫は、胸の中に黒い物を溜め込んでいるような状態です。
それを、妻の言動をきっかけにして、妻に対して吐き出しているのです。
これに、妻が「弱そうに見える」(実際には弱くはありません)から、妻を軽く見てる、という夫婦の関係も手伝って、激しくキレる、ということになるのです。
モラハラの加害の程度が強すぎるために、被害者が「夫婦でいることが辛い」と感じるようであれば、それはもう、夫婦間の問題とは言えなくなります。
夫婦間の問題を飛び出して、社会的な問題、法的な問題ということになってきます。
婚姻関係は、生物としての男女の結び付きを、社会的なものとしたもので、民法という法律が、その関係について規律しています。
つまり、一方が、「夫婦関係を止めたい」と思った時点で、法的な問題になるのです。
もともと、他人なのですから、夫婦間の互いに婚姻するという意思を法が保護して初めて、婚姻関係は成り立っているわけで、一方が「他人に戻りたい」と思えば、もはや夫婦だけの問題ではなくなります。
>>モラハラ雑感
話を戻して、モラハラ加害の問題が「程度」の問題であることを、具体的な例で説明します。
実際にあった例ですが、旅行中のサービスエリアで、ちょっとした連絡の行き違いから、モラハラ夫とはぐれてしまい、モラハラ夫を車で数分間待たせてしまったということがあったとします(ちなみに、被害者である妻は、夫の携帯電話に電話しませんでした。過去に、携帯電話にかけてキレられた経験から、怖くてできなかったのです。何をすれば夫がキレないで済むのかわからない、何が正解なのかわからないほど、追い詰められた状態でした)。この事例では、モラハラ夫は、激しくキレて、妻を罵倒し、旅行は台無しになってしまいました。普通の夫婦の間で、同じようなことがあった場合、夫は、「待っちゃったよ」などと、待たされたことに軽く文句を言うかもしれませんが、激しくキレるということはないし、連絡の行き違いは双方に責任があるので、妻も「そっちが連絡すればいいじゃない」くらいの反論をするかもしれません。それだけであれば、まったく問題ないわけで、モラハラとは言えません。これが、モラハラ夫婦の間だと、激しくキレるという結果になってしまうわけです。つまり、普通の夫婦との違いは、「程度の違い」なのです。
このキレる「程度の違い」が、モラハラ被害者にとっては大きな問題なのですが、他人に話すと、「質的な違い」があるわけではないので、「うちにもあるよ」と受け止められてしまったりします。
親や友人に話しても、理解や共感を得にくいことも多く、親や友人に理解してもらえないと、本当に絶望的な気持ちになってしまいます。
長期間日記をつけ続け、それをある日まとめて人に見せれば、理解を得やすいかもしれませんが、そんなことする時間はもったいないし、モラハラ加害者には、ハネムーン期と呼ばれる、問題が解決したかのように見える期間があるので、日記をつけるのを止めてしまったりします。
弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)
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