離婚の原因
目次
離婚原因は民法で定められている
裁判所を利用して離婚が認められるためには、民法770条1項1~4号に規定された以下の4つの離婚原因が存在していることが必要になります。
1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
民法770条2項は、「裁判所は、前項第1号から第3号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」と定めていますが、実務で2項が問題になることはまれです。
4つの離婚原因について
4つの離婚原因について、それぞれ説明します。
1.不貞行為
不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づき、配偶者以外の異性と性的関係を持つことで、いわゆる浮気や不倫のことです。一時的なものか継続的なものかを問わず、一度でも肉体関係があれば不貞行為となります。
不貞行為を離婚原因として主張する時、まず問題になるのは、証拠があるか否かです。最も典型的な証拠は、いわゆるラブホテルに二人で入ってから出るまでの探偵の調査報告書です。不貞は、肉体関係自体を直接示す証拠が出されることはほとんどないという特殊性があります。肉体関係自体を直接示す証拠がほとんど出されないという状況においては、ラブホテルに入ってから出るまでの探偵の調査報告書が、もっとも確実に不貞を立証する証拠とされます。ラブホテルに二人で滞在しておきながら、肉体関係がなかったという弁解をしても、裁判所がその弁解を認めることはないと言ってよいです。二人きりで滞在したとしても、それがどちらかの自宅であれば、「滞在はしたが肉体関係はなかった」という弁解がされることが多く、その場合、ラブホテルと違い、「二人で滞在したからには肉体関係を確実に持つだろう」と直ちに言えるとは限らないため、裁判所は慎重に判断することになります。二人きりで建物内に滞在したという証拠以外では、LINE等のメッセージのやり取りの証拠が出されることが多いです。メッセージは、本人は強力な証拠と思って持って来ることが多く、たしかに読んでみると男女の関係ではないかと思わせるようなやり取りをしているのですが、二人きりで泊まったことや、肉体関係を持ったことを直接示す内容が書かれてることは意外に少なく、これだけで不貞が認められることは多くはありません。
証拠がなくても、相手が不貞行為を認めれば、立証は不要になり、実際にそういう事例も意外にあります。しかし、多くの場合、相手は、証拠がないと不貞という事実を認めようとしません。不貞が認められると、慰謝料が発生したり、離婚が認められにくくなったりといった不利益があるからです。中には、有力な証拠を示しても、不貞を否定する人もいます。 不貞の証拠について詳しくは、不貞行為の証拠として有力な資料についてをご覧ください。
配偶者が異性を強姦した場合も該当するか、不貞相手が同性だった場合も該当するか、ということが書いてある本やサイトも見かけます(ちなみに強姦した場合は不貞行為に該当します。不貞相手が同性だった場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を適用して離婚が認容された例があります)。 しかし、実務家から見れば、いずれかの離婚原因に当たることは明らかなので、これらの場合が条文のどの離婚原因に該当するか、不貞行為に当たるかどうか、ということは実務上考慮しなくてよい部分です。
2.悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦間の同居・協力・扶助義務、あるいは婚姻費用分担義務に違反する行為をいいます。 たとえば、配偶者や子どもを放置して家を出て、生活費の負担もしない、というようなケースが該当します。これが離婚原因として主張されることは実務ではまれです。なぜなら、例えば夫が妻と子を捨てて家を出た場合に、妻から離婚を求められたら、夫は離婚に応じるというより、むしろ離婚したいと思っていることが通常だからです。そのようなケースでは、離婚の意思が合致しているので、離婚原因をめぐって争いになることはありません。
ここで、モラハラ特有のおかしな事例をご紹介します。例えば、妻が離婚したくて自宅を出たというケースで、離婚したくない夫側から「悪意の遺棄だ」と主張されることがあります。しかし、悪意の遺棄の離婚原因は、本来、悪意の遺棄をされた側が、自分を捨てたような相手とは離婚できるという趣旨で設けられたものです。「お前がしてることは悪意の遺棄だ。だから‥‥離婚‥‥しない!」って‥‥。意味がわからな過ぎます。一応、「妻は悪意の遺棄をした有責配偶者だから妻からの離婚請求は認められない」という論理構成はあり得なくはありません。しかし、夫が離婚しないと言っている時点で、妻が有責配偶者にあたるほど悪いことをしたとは通常考えられませんから、この主張が認められる可能性はゼロと言ってよいでしょう。他方で、夫が、「妻は悪意の遺棄をした。だから離婚する」と主張してきた場合は、妻は離婚したく自宅を出ているわけですから、夫からそのように主張されたところで、痛くもかゆくもありません。一応、夫側から慰謝料請求をする可能性も考えられますが、悪意の遺棄を原因として慰謝料が認められることはほとんどないと思われます。
以上の通り、夫側から悪意の遺棄を主張された場合、実務家からすれば、「なんでそんな無意味な主張をするのだろう」と思ってしまいます。ところが、「悪意の遺棄だ」と言われたモラハラ被害者の妻は、気にしなくていいのに、「悪意の遺棄にあたってしまうのでしょうか」と心配になったりします。夫から指摘されると自分が悪いことをしてしまったのではないかという思考に陥りやすい被害者の傾向が伺えますが、そんな心配はしなくてよい、ということです。
3.3年以上の生死不明
3年以上の生死不明とは、最後に配偶者の生存を確認してから、生死がわからない状態が3年以上継続している状態をいいます。生死不明になった原因は問いません。 ただし、所在不明でも、配偶者から電話などで連絡がある場合は、生存が確認できているので、これには当たりません。 本来、離婚訴訟を提起する場合は先に調停を起こす必要がありますが、3年以上の生死不明の場合、調停前置主義の適用がなく、調停を申立てずに離婚訴訟を提起することができます。
かなり特殊な状況で、この特殊な状況になった人にとっては離婚して関係を清算するために必要な条文と言えますが、実務で問題となることはまずありません。
4.その他婚姻を継続しがたい重大な事由
婚姻を継続し難い重大な事由とは、婚姻共同生活が破綻しており、回復が見込めないと判断されるケースのことをいいます。 夫婦双方が婚姻を継続する意思がない場合は通常これに該当します。また、別居が長期間続いている場合など、客観的に婚姻共同生活の回復が見込めない場合もこれに該当し、離婚請求が認められます。
これまでの裁判例で問題になった具体例は、以下のような内容です。
・長期間の別居 ・性格の不一致 ・配偶者の親族とのトラブル ・多額の借金
・宗教活動にのめり込む ・暴力、虐待 ・ギャンブルや浪費癖 ・性交渉の拒否
・犯罪行為、犯罪行為による長期懲役 ・重大な侮辱
実際の実務で問題となるのは
上記の通り、4つの離婚原因のうち、「3年以上の生死不明」は、実務ではほとんど問題になりません。 「悪意の遺棄」についても、実務上はほとんど問題になりません。配偶者を置いて家を出て行くなどの悪意の遺棄をした側の人は、通常は離婚に同意するので、離婚意思の合致を理由に離婚になるからです。配偶者から離婚したいと言われている側が悪意の遺棄を主張するというおかしなケースについては上記の通りです。
そのため、実際に問題になるのは、「不貞行為」か「その他婚姻を継続し難い重大な事由」ということになります。不貞行為に該当しないケースはほとんどが「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として主張されることになります。 配偶者に不貞行為がないケースにおいて、離婚原因の争いは、モラルハラスメント等の行為が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかの争いになる場合がほとんど、ということです。
もう一つの非常に大きな要素は別居期間
ただし、離婚訴訟において、モラルハラスメント等の行為が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが常に争われるかというと、そうとは限りません。 それは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を判断するうえで、もう一つ、非常に大きな要素があるからです。 それは、別居期間です。 別居期間以外の離婚原因だけでは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しない場合でも、別居期間が長ければ、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められることになります。よく、「モラハラは離婚理由になるのでしょうか」と相談に来る人がいます。「自分のケースでは、直接的な暴力がないので、離婚できないのではないか」と心配する人も多いです。しかし、離婚するためには、必ずしも、モラハラが離婚原因と認められる必要はないということは理解しておいた方がよいです。実際に別居期間の経過を理由に離婚を求めていくかは別として、「別居期間が長くなれば必ず離婚になるんだ」と理解しておくことで、心配をやわらげることができます。
どのくらいの別居期間があれば離婚が認められるかについては、別居後何年で離婚できるかをご覧ください。
弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)
最新記事 by 弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属) (全て見る)
- 夏季休業のお知らせ - 2026年8月1日
- 財産分与で預金を隠されたら?調査方法と対処法を弁護士が解説 - 2026年7月30日
- 夫名義の家は離婚でどうなる?財産分与を弁護士が解説 - 2026年7月17日






