モラハラ加害者との電話や面談での協議はストレスフルのうえ話が進まない~他人と意見が違うことを受け入れられない+電話を切ろうとしない
目次
交渉は弁護士の仕事の一つ
弁護士の仕事の一つに、相手と交渉して合意に向けて進めるというものがあります。
調停や訴訟で裁判所を介して手続きを進めるのではなく、相手と直接話すなどして、交渉することです。
離婚で言えば、離婚協議の段階のことです。
交渉は、一般的には、互いの意見を出し合い、互いに譲歩できる部分は譲歩し、合意を目指す、というものです。
弁護士などの専門家以外の人とも、建設的な交渉は可能な場合がある
交渉は、相手に弁護士がついていればその弁護士としますが、弁護士がついていなければ、法律や交渉の専門家ではない相手と直接話すことになります。
専門家でないため、感情的になることも多く、弁護士相手の時より慎重な対処が必要になるのですが、「できるだけ早期に合意に至る」という共通の目的があれば、何とか交渉を進められることも多いです。
例えば、不貞の慰謝料請求といった事案では、相手に弁護士がつかないことも多いですが、相手が不貞の事実を認めている場合は、金額の交渉だけですので、専門家ではない相手と直接話して交渉することで、合意に至ることも多くあります。
いきなり訴訟をするより、その方が互いにとってメリットがありますので、直接話して交渉で合意の可能性を探ることは、重要かつ必要な過程となってきます。
このように、相手が専門家でないからといって、交渉ができないというわけではありません。
モラハラ加害者との交渉、特に口頭での交渉は、困難で、ストレスフルなことが多い
ですが、この記事自体の内容は、
しかし、モラハラ加害者の人は、思考過程や感覚が普通と違う場合が多く、交渉は困難なことが多く、特に電話や面談といった「口頭での交渉」では、話が進んだという記憶がほとんどありません。
そのうえ、こちらの話が終わっているのに話を終わらせてくれず、ストレスフル、かつ、時間をとられることが多いです。
弁護士同士であれば、たとえモラハラ加害者の代理人弁護士が相手であっても、電話が3分を超えることはまずありません。
お金の話であれば、書面で互いの主張を整理した方が話が進みますし、書面の証拠を提出することが、交渉を進めるうえでも重要になってきます。
お金以外の話、例えば離婚するしないといった話は、口頭で互いに罵りあったり泣き落としをしたからといって話が進まないことは明らかです。
ですから、それがわかっている弁護士同士が口頭で交渉する内容は限られており、また、相手と意見が違うことがわかった場合は、自分の意見の根拠を述べることはあっても(数十秒で伝えることができます)、無駄に話を続けることはしません。
ところが、モラハラ加害者本人が相手の場合は、話が長くなるうえ、話が進まないので、ストレス以外の何ものでもないことが多いです。
主張や金額の整理、書面の証拠の提出を、郵送などでやり取りした方が、よほど建設的で話が進むのに、それをせず、安易に電話をかけてくる人が多いです(郵送は若干面倒なので、もともと離婚したくなかった人は、「なんで俺が郵送なんて面倒なことをしなけりゃならないんだ」と、なぜか上から目線で思っているのではないかと思います。しかし、離婚意思が合致している場合は、離婚の争点は多岐にわたることが多いので、若干面倒でも、書面でやり取りした方が建設的な場合が圧倒的に多いです)。
そして、専門家であるこちらからすると、通常、1、2分話しただけで、「これ以上話す意味はない、一旦話を止め、書面で互いの主張を整理したり、証拠を出し合うという段階を踏んだ方がよい」もしくは「交渉は決裂だからこれ以上話しても意味はない」、となる場合がほとんどです。
ところが、モラハラ加害者は、意見が違うことを受け入れられず、こちらが電話を切りたいと思っているのに、しかも、電話を切りたいことを伝えているのに、電話を切ろうとしません。
これは、非常にストレスフルだということは、想像できると思います。
さらに10分くらい経ち、こちらからすると、非建設的な話が続いているな、と感じ始めますが、相手はよりヒートアップし、話を止めようとしません。
「これ以上話しても互いにストレスを感じるだけで、時間をとられるだけだから、電話を切ればいいのに」と思います。
相手は、自制がきかず、話を止められないんでしょうね。
また、モラハラ加害者は、配偶者に対して、罪悪感をつく、恐怖心を生じさせる、といった方法でコントロールすることに慣れているので、そういった手段で、何とか相手をコントロールし、自分の意見を通そうという意識が働くのだと思います。
こうして、多くの場合、30分が経過します。
10分から30分の間の20分間は、相手は感情的になっています。
こちらも、言われっぱなしでいるわけにはいかないので、反論します。
こうして、互いにストレスを感じ、消耗するだけの時間が流れます。
ところが、相手は、再び電話をかけてきます。
「かけてこなければいいのに」と思いますが、自制がきかないのと、普通の人と感覚が違い、言い争いをしたり、相手を責めるのが好きなのではないかと想像します。
それに、そもそも、話をするのが単純に好きで、たとえ言い争いであっても、話をすることで気持ちよくなる部分があるので、繰り返すのではないかと思います。
電話をかけることによる効果や目的を事前に想像せず、安易に電話をかけてきて、ベラベラとしゃべる、という雰囲気です。
同じようなことは、離婚したくない相手が、面談したいと言ってきた時にも生じます。
離婚したい、離婚したくない、という意見の対立があるので、話をしても無駄だということは明らかです。
ですが、「離婚したくない。面談したい」と言われれば、弁護士として無下に断れませんし、ガス抜きをすることで離婚の方向に進むこともあり得るので、応じることも多いです(ただし、相手が紳士的に面談を申し込んできた場合に限ります。面談を強要するような人に対しては、毅然とした態度で拒否することもあります)。
この場合、こちらは、「離婚意思は変わらない」という結論はまったく変わらないことがわかっているのに、相手の「離婚したくない」という話をきくことになるので、極めて、極めてストレスフルな時間となります。
モラハラ加害者に弁護士がついた場合にも、これを申し込んでくる人がいるので、勘弁して欲しいと思います(相手の弁護士からすれば、自分の依頼者のガス抜きという意味があることは理解しますが、中には、本気で「離婚すべきでない」と思っているように見える人がいます。私の依頼者が「そっか。離婚するのやーめた」となるわけないし、私が、離婚したがっている自分の依頼者に対して、「離婚しない方がいいんじゃないですか」という話をするわけがないことは、容易に想像できると思うのですが‥)。
私の経験上、相手の「離婚したくない」「離婚すべきでない」という話をきいて、「そっか。離婚するのやーめた」となった人は、皆無です。
このように、モラハラ加害者の人との「口頭での交渉(電話や面談)」は、建設的なものとするのが困難です。
離婚意思の点で対立している場合は、あまり「口頭での交渉」はする意味がないと思っています。
離婚意思が合致している場合も、書面での主張や金額の整理、証拠の提出を、郵送などでやり取りし、「口頭の交渉」は、必要な場合に、必要な内容に限って行う、とすることが、互いの時間を消費することなく、ストレスも少ないので、ベターだと思っています。

弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)

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