弁護士でもモラハラ加害者の心理を理解していない人が多い
先日、モラハラ被害者の方の法律相談をしていた時、次のような話がありました。
その方は、配偶者からのモラハラを苦にして離婚を進めようとしていたのですが、相手が離婚に応じずに困っていました。
その状況で、別の弁護士に相談し、「どうして相手は離婚に応じないのか」と質問したところ、その弁護士が、「相手の気持ちはあなたの方がよくわかるのではないですか」と答えたということでした。
相手の気持ちがわからず、どう進めてよいかわからないから弁護士に相談しているわけですから、そんな風に言われたら、困ってしまいますね。
私は、モラハラ事案を多く扱っていく中で、「どうして相手は離婚に応じないのだろうか」ということを散々考え抜き、具体的な事案を通して分析してきましたから、答えることができます。
その答えは、このホームページの中にも繰り返し書いていますが、一言で言えば「モラハラ被害者は悪いことをしていないから」です。
この答えについては別の記事に譲るとして、この相談者の話からわかることは、弁護士でも、モラハラ加害者の心理を理解していない人がいる、ということです。
私が思うに、この弁護士が特に実力が低いというわけではないと思います。
モラハラ加害者は、普通の人とは思考パターンがまるで違うので、多くの人と接していて、人物観察に優れているはずの弁護士であっても、その思考パターンを推測するのが困難、ということです。
その思考パターンは、決して合理的なものではありませんので、「合理的に考えれば、こう判断するはずだ」という推測が通用しません(そのくせ、合理的に考えているかのうような言動をするから、なおさら性質(たち)が悪いのですが)。
モラハラ加害者の思考パターンを推測するのに有効なのは、そういう人と接した経験です。
私も、最初の頃は、モラハラ加害者の思考パターンがつかめませんでした。
「あれ?合理的に考えたらこうするはずなのに、なんでそうしないんだ?」ということがよくありました。
そのたびに、「どういう心理から、そのような言葉を吐くのだろう、そのような行動をするのだろう」ということを考え、仮説を立て、被害者に話をきいたり、こちらからモラハラ加害者に投げかけたアクションに対するモラハラ加害者のリアクションを確かめるなどして、検証を重ねました。
もちろん、専門家が書いた本を読んで研究したりもしました。
そうやって、何度もモラハラ加害者と交渉を繰り返すうちに、モラハラ加害者の人は、似たような行動パターン、思考パターンをすることがわかってきました。
そういう事例を集積していくと、初めて交渉するモラハラ加害者でも、その行動パターンや思考パターンが推測できるようになってきました。
モラハラ加害者が離婚に応じないという場合も、なぜそうなのかが理解できますので、とるべき対応方法がわかります。
このように、モラハラ加害者との交渉は、経験が物を言う分野ですから、経験豊富な弁護士にご相談することをおすすめします。
弁護士 松平幹生(神奈川県弁護士会所属)
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